柿沼会長へのインタビュー

2023年9月20日

埼玉県地域婦人会連合会(埼玉生団連) 会長 柿沼 トミ子

一般社団法人大手家電流通協会 事務局長 長野 毅

長野 大手家電流通協会は、昨年 12 月に社団法人化し、分科会活動を活発化しようとしております。分科会にはリサイクル分科会、脱炭素分科会、のようなものがあります。こうい った分科会活動においては、消費者の意見を聞きながら進めるということが非常に重要であると考えております。
柿沼会長 生団連の創設目的である、「暮らしに密着、生活者の地位を高く」から考えても家電量販業の皆様は、とても近しい存在です。生活の中で家電を使わない日はありません。県庁で環境部長を務めていた時に、不法投棄、ダイオキシン問題に直面しました。テレビ廃棄になぜ、4000 円を払わなければいけないのかという消費者の声にも当時は、積極的に 対応しました。また都市鉱山ということにも対応するために、家電リサイクルのスキームについても研究・取り組みをおこない経産省とのやり取りの難しさも経験しております。電気料金問題は役所の進め方の問題であるが、消費者が負担しているのは残念です。 量販店の取り組みとしてアフターケアが重要だと思っており、それがネット販売とは違うところかと思います。ライフステージで、冷蔵庫の大きさも変わるし、買い替えも発生します。高齢者は冷凍庫のニーズが高かったりもします。そういう消費者ニーズを、家電業界もとらえてほしいと思います。
長野 生団連や過去のご経験についてお聞かせいただき大変勉強になりました。
柿沼会長 生団連については 10 年前に前清水会長が川上から川下の流れだけでなく、消費者の意見を聞きながらモノづくりをする流れが必要という考えと、経団連のような重厚長大な集合体だけでなく、生活に密着した業界の社会的地位を上げていく必要があるという考えに賛同いただき、現在 600 社ほどが加盟しています。清水前会長に加入を依頼された際に埼玉県の会長として加盟し、生団連副会長の一員となりました。しかし、地域により課題の優先順位が違うため、地域部会の設立が提案され、その第一号として埼玉部会の実現となりました。現在の 3 都道府県より拡大を考えているが、地域がまとまって消費者と事業者と連携しながら活動する体制をつくるためには時間がかかります。
長野 生団連様の中に埼玉や北海度、大阪に都道府県単位で設立され、消費者団体を中心に地元の企業と連携し活動されていることは素晴らしい取り組みと感じました。
柿沼会長 埼玉の重点取組みは、物流問題に起因する問題として、食と環境の 2 つの問題に対し分科会を行う予定です。また、流通経済研究所に食品ロスと物流について講演いただく予定ですが、ヤオコーの食品ロスの取り組みを講演していただく中で、物流の効率化のためにスーパーマーケット 1 社の取り組みではなく、共同配送を行う等の施策が始まっていますが、消費者側も目先の消費期限などの事象にとらわれず、このような取り組みについても理解する必要があります。
長野 当協会においても経産省より物流における 2024 年問題について、荷主の立場で自主行動計画策定の要請があり、策定に向けた検討を行っています。それに加え、RFIDタグの導入に向けた検討や物流に関する分科会設立等について活動しており、同じような取り組みかと思われます。
柿沼会長 トラック協会の元会長からトラック業界は人出不足と労働時間の規制に加え、エネルギーの高騰により、非常に厳しい状況になると話を聞いております。
長野 その通りでございまして、経産省の物流ご担当者様のお話では、食品の廃棄ロス削減などの効果もあり、トラックの積載率が下がってきており、配送の回数を減らすなど の取り組みが必要となってきてます。また、納品時の順番が到着順であるため待機時間が多くなる状況について、システムを使って予約制にすることで効率化が図れるなど、このようなシステムを得意とする企業が起業してきております。
柿沼会長 廃棄ロスといった点で、家電のテレビや冷蔵庫、洗濯機などリサイクル 4 品目については、全て分解するのでしょうか。また回収されたものは再生できるのでしょうか。
長野 リサイクル4品目については、法律でリサイクル料金をお客様から預かりメーカーが分別まで行うことが義務付けられており、リサイクル率を上げる努力はメーカー主導で行われています。金属部品は、ほぼすべてが再生できますが、問題は廃プラスチックの再利用問題であり、大きな課題として取り組みが進められてます。都市鉱山からの金属回収取り組みのような、資源の少ない日本にとって、リサイクルの取り組みは非常に重要な問題であると考えております。法施行前は、使用済みの家電の廃棄が難しいため、不法投棄が多くありました。その点では、家電量販店は、リサイクルスキームの担い手として貢献していると考えております。
柿沼会長 不法投棄は今でも多いのでしょうか。またリサイクル料金は購入時費用に含まれていないのでしょうか。
長野  不法投棄については年々改善されてきておりますが、まだまだ無くならない状況です。家電の場合は車のように登録制ではないので、使用者が特定されていないため回収時にリサイクル料金を支払う仕組みになっております。家電販売店は引き取りを行い、メーカーに送ることが義務化されています。リサイクル4品目については買換えが圧倒的に多いので回収の流れはできていますが、その場合、消費者にとっては、家電量販店が買取も積極的に行っていることで、リサイクル料金を払わずに、回収を依頼できるという流れもあります。一方で、消費者からの搬入先となっていることは、家電量販店にとっての回収に対する負担は、非常に大きいものとなっております。
柿沼会長

家電量販店と消費者のつながりについては、さまざまな観点があることが理解できました。消費者は、労働者でもあり、その観点で申し上げますと、埼玉県は外国人労働者が多い地域特性があります。結核予防会にも携わっており、その研修会の講師の話に、東南アジアから労働目的で来日している方々は母国で結核予防などの措置は何もされていないことが多いということで、保菌者として入国し、日本国内において菌が拡散されることが考えられ、これによる罹患は免疫力や体力的に抵抗力が低い高齢者などの確率が高いとの話を聞いております。

埼玉県知事や埼玉生団連の会議の中でも話をいたしましたが、外国人労働者を単純な労働力としてだけではなく、地域人として納税者として確実に健康チェックの仕組みを取り入れてほしいと要望させていただきました。

長野 さまざまな観点からのご示唆いただき感謝申し上げます。当協会として消費者団体の方と様々なテーマについて連携させていただき、分科会等でご意見をいただく機会を作っていきたいと考えております。これまでの活動は大きく 3 つあり、具体的には、サーキュラエコノミーの取り組みの一環としてリサイクル商品の販売やリサイクルのスキームを各社行っており、消費所の方がこのような取り組みをどのようにどのようにとらえているのか等お聞かせいただく機会を作りたい。また、業界として政府や社会からカーボンニュートラルの取り組みについても消費者の皆様と連携させてい ただきたい。脱炭素については、省エネ家電、省エネのリフォーム、再生エネルギー についても家電業界として力を入れており、こちらについても消費者の皆様と連携させていただきたい。物流問題については、2024 年問題の解決策の一つとして RFIDタグの導入を検討しており、それによりデータによる商品の正確なトレースが可能となります。こういった事をテーマとした分科会にご出席いただきご意見をいただくと いうことも考えております。当協会がご協力できることや必要な情報提供などおっしゃっていただきたいと思います。 
柿沼会長  家電を買い替えるときの不安であるとか、大手家電流通協会の皆さんに、一般論としての家電の使い方や注意点等について講師をお願いするような話になることも考えられます。また我々は、社会課題に対して意見を申し上げることが存在意義であり、協会活動がそういった観点で運営されるのであれば、協力は惜しまない考えです。
長野 ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。